冒険の終わり、そして始まり。
hashi監督のイングランドでの監督任期が満了した。
ベテラン選手の怪我と調整不良で満身創痍の1年目であった。
結果はカップ戦こそ善戦するも、リーグでは中位に甘んじる体たらく。
万人から見ても決して良いと言える物でなく、コアなサポーターからは試合中に解任のヤジも飛んでいた。
ヨーロッパのカップ戦への出場権はなんとか得た物の、前任のベンゲルがコンスタントに出していた結果を超える事が出来ず、ロンドンのゴシップ紙には次のシーズンの監督が誰になるのかという記事が毎日のように一面を飾っていた。
やはり、日本人にイングランドトップリーグの監督は務まらないのか、日本のサッカー観は世界に通用しないのか、と日出る国のサッカーファンやメディアも落胆していた。
そんな中、普段は饒舌だがここ何日か多くを語らなかったhashi監督がシーズンオフの練習試合でFCバルサミコのKSK監督と再会し、少し心が緩んだようで、久しぶりにメディアに向けてメッセージを発した。
まず、今シーズン辛い思いをさせたチーム関係者やサポーターにお詫びをしたい。
選手の怪我が重なったとはいえ、それを采配でカバーするのが監督の役割で、それがうまく機能しなかったのは自分の責任。
ただ、シーズン中盤にあったカップ戦では3つのタイトルをとる事が出来、このチームが実力のあるチームであることも判ってもらえたと思う。様はその力を長丁場のリーグ戦でどう維持して行くか、それがこのチームの一番の課題。今後はそういうところに力を入れないと行けないと思う。
-「今後」という発言がでましたが、来シーズンの契約は…
先ほど、クラブ側から監督として、来年もクラブの指揮を採って欲しいという打診がありました。
一部選手(アンリとセスクだと思われる)がクラブ側にhashiが監督を降りるなら、自分たちはこのクラブを去る、という申し入れをしたそうで、クラブとしては彼らを引き止める材料として、オファーを出しているみたい。
なので、自分としては(オファーを断るつもりで)ちょっと考えさせて欲しい、と答えたが、その後、心臓病の再発で今季限りの引退を考えているカヌと、今期怪我のために活躍できなかったピレス、それにチーム得点王デニス(ベルカンプ)が練習の後、グラウンドでこのチームに残ってくれ、それがこのクラブにとっても一番いいことだ、と直接話をしてくれた。
いやー、熱い物がこみ上げてきましたよ、あの時は…。
Jのクラブでもこんな経験した事無かったから。最近つらいこと続きで涙腺緩くなってるから、もうちょっとで涙が出そうやったね。
そんなこんなで来シーズンもDreamC@stFCの指揮を採ることを決めました。
カヌや今シーズンの起用法に満足できなかった一部の選手(おそらくフレブ・キャンベル・ジウベウト=シウバ)はすでに退団の意思を表明しているようなので、これからスカウト部長とじっくりミーティングし、今期足りなかった部分と抜けた選手を補える強化策を作ります。
-今期の(良いとは言えない)結果の原因はどこにあったと思いますか
まず、イングランドのフットボール観にフィットするのに時間がかかったこと。
こっちでは居残り練習するやつはあほや、みたいな日本人には理解しにくい「プロフットボーラー」の意識というものが確立されており、そこに戸惑いを感じました。
言葉の面は思ったより苦労しなかったので、それは問題にはなってないと思う。
次にチームの特性を引き出すのに時間がかかった事。
今までのチームでは自分のチームの色を出す前に、相手の長所を消すという事に重点が置かれてた。
つまり守備から入るチーム。組織でも個人でもまず守備。フォワードも前からチェック、という感じで。
ところがここでは違う。
フォワードに守備はさせない。点を取るためだけに働いてもらえれば、守備は守備の役割の選手がきっちり仕事をこなす。
といってもフォワードもゴールキックのカバーリングぐらいはするけど。
なのでむやみなランニングや全体の守備練習に重点を置いた練習をしていたのがいたずらに攻撃陣の得点感覚を削いでたんやろうね。
これはJと世界の差である程度しょうがないもんや、と今なら簡単に言えるけど。
来季は攻撃オンリーと行ってもいいぐらいのチームにしようと思ってます。
選手間のコミュニケーション不足も目立ってた。
チームにはええ感じのラウンジが用意されてて、そこで選手との交流が出来るようになってんのやけど、ミーティングルームとかグラウンドでしか選手と話をしなかったのが悪かったんやと思う。
派閥といったら言葉が悪いけど、フランス人同士集まったりして、そこにイナモトがなかなかとけ込めなかったりしてたから。
あと、選手の特性をうまく行かせてなかった事もあった。
セスクとピレスを含めた攻撃陣のパスワークがうますぎるので、彼らに任せきりになってた部分が多い。
たまにはチームの「コア」であるビエラや長身と抜群のキープ力をもつカヌをキーにして、意外性のある攻撃も必要やったかな、と。
でもなあ、あのパスワークを見てると、あと10分で点採れる、あと3分はボール回せるって誰でも思うやろうからなあ。
-最後に。久しぶりのKSK監督とはどんな話をしたのですか。ずいぶん楽しそうでしたが。
んー、くだらない話ですよ。嫁の話とか、こっちが連敗続きのときスペインで行った強化キャンプのときに食べたハムの話とかw。
(注:後にアデバヨール、ロナウドへのスカウティング協力要請だった事が選手達本人の口から明らかになる)
来季こそ雪辱を晴らし、ヨーロッパを席巻することを期待している。
その期待に応えられる可能性をもった監督である事はカップ戦の結果からも明らかなのだから。
きっと出る国のサッカーファンもそれを待ち望んでいるだろう。
ロンドンから遠く離れた、ここスペインバルセロナに嬉しいニュースが舞い込んで来た。
それはロンドンでのデビューシーズンを鮮烈なものにしたhashi監督にクラブが
契約延長を打診し、それを了承したという報道だ。
ーお互いにヨーロッパで刺激し合える仲間ともライバルとも言えるKSK監督に話を聞いてみた。
「とてもデビューシーズンだとは思えない活躍だったからね。
チーム、サポーターはもっと彼の存在に感謝するべきだと思うよ。今から2年めが楽しみだよね!
自分も今現在、非常に難しいシーズンを送っているから彼の苦労も想像出来るから
まずは再契約おめでとう!と言わせてもらうよ。」
ー何か最近、hashi監督と情報交換していると噂されていますが?
「あぁ、来季に向けてアドバイスしたりされたりさ。w
本当の目的は補強選手の情報を得る事だけどね!
自分もそろそろ契約の話が出てくる頃だと思うから、
あの伝説の3Rを獲得出来るようであれば前向きに考えるよ!」
ーhashi監督にメッセージをお願いします。
「前にも言ったと思うけれど、お互いのチームが目指すフィロソフィーは違うが
スペクタクルな試合をファン・サポーターに提供するという考えは一緒さ。
そしてそれに共感した選手が集まっている所も一緒。
おのずと結果は付いてくるさ!また、あの舞台での再戦を楽しみにしているよ!」
(2008.11.7「MUNDO DEPORTIVO」紙より抜粋)